Focus On
山口隼也
株式会社ポリグロッツ  
代表取締役社長
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シリーズ「プロソーシャルな距離」について |
00 UltraRemote
TERASSには出社義務はもちろん、在宅勤務の事前申請という概念もありません。自身と組織が一番クリエイティブかつ効率的に成果を出せる場所ならば、どの国の、どんな場所で仕事をするかどうかを問いません。
Re-invent Things. 現状を常に疑う同社では、物理的な組織を疑い再設計していった。「個」が最も能力を発揮するために、最も良い選択をする。そのための選択が、「ウルトラリモート」だった。
リモートワークが活発になった今、遠隔での組織運営を成功に導くために必要なことは何だろうか?
「まずは経営者の意志ですね」
当たり前に思えることに聞こえるからか、少しはにかみながらもハッキリと語る江口。
「顔が見えないことの不安は結構あります。『カレンダー、すかすかだけど大丈夫?』とか、『(見えないから)おーい、働いてる?』みたいな(笑)」
経営者の心配を想像して話す。「だからこそ」と同時にその不安という実態のないものに釘を刺す。
「不安は常につきまとうけど、じゃあ一緒にオフィスで働いていたら、すごい働いてるのか?というとそれも違う。リモートでやるんだという、経営者の意識改革がまず必要だと思います」
物理的なオフィスに集まり、従業員の働く姿が見えると安心感がある。しかし、それは物理が生んだ感覚の話なのかもしれない。実際は「仕事をしている」ように感じられただけであったかもしれない。
現在の社会情勢から、やむなくリモート体制を選択した組織も多い。「これまでそうだったから」「現状こういう市況だから」といった、連鎖反応として働く場所を決めるのではなく、「リモートでやるんだ」という経営者の意志をもつ。その意志が、メンバー個々の仕事を「感覚」ではなく、「実態」として仕事をしているかどうかで規定していくという。
「そもそもオフィスを仕事場としている意味はなんだったのか?」「その場所で働くことの効果は?」「リモートを選択する意味は?」それらを再考することで、未来へ繋ぎたい。
POINT ・ 経営者として働く環境への意志を持つ |
02【メンバーの意志】True Ownership
オンラインMTG中の風景。あくまで自律的な意思決定の下、期待されるアウトプットさえ担保されているならば、働く場所に制約はいらない。同社では、インプットのために北欧を旅行しながら働くデザイナーもいるという
私たちは1人1人が自分の人生および役割のオーナーとして、自ら考え、自らが意思決定します。他責はやめ、リスクを取ったアクションを生み出すことで、より大きな価値を世の中に素早く生み出します。
経営者が「リモートにする」という意志を持ったとして、その組織に属するメンバーはどうあれば、より生産性の高い組織運営となるのだろうか?
「経営者として組織はメンバーが最も働きやすい状態をつくる、選択肢を与える。会社に行った方が合理的な人もいれば、そうじゃない人もいるなかで、個々人は自分が最も効率的に働ける環境を選択する意志が大切だと思います」(TERASS社のウルトラリモートという制度についての言及)
経営者自身が意志を持つ。と同時に、従業員個々も自らの意志を持って働く場所を選ぶことがカギとなるようだ。
「従業員自身」の意志を伴う選択と、生産性の関係について自身の経験を通して語る。
「実際、僕がリクルート時代にリモートで働いたとき、すごくサボっちゃったことがあるんですよ。一日キングダム読んでたんです(笑)。今も家はリラックスするものとして、こだわりをもって作っていることもあって、家ではあまり仕事はできなくて。オフィスに『行かなきゃいけない』と『意図を持って行く』のは全然違うんですよね」
従業員として「意志」のある働く場の選択であるかどうか。(オフィスに行くことのできるCOVID-19以前のような環境下では)オフィスに行った方が合理的だという人が、家で仕事をしてパフォーマンスが下がってしまうのは無理もないと江口は考える。
経営者の意志は大切だが、経営者が思うだけでは組織は成立しない。従業員個々の自律的な意志/オーナーシップが、TERASSのウルトラリモート組織での高い生産性を担保しているのだ。
しかし、現在は個々人の意志に関わらず、リモートワークを余儀なくされる人も多い。
これを機に、「かつての働く環境の選択に意志はあったのか」、「家での環境づくりでは何が効率的か」など働く環境へのオーナーシップを持って考えることで、非効率が排除され、パフォーマンスが高まる働き方を手にできるかもしれない。
POINT ・「経営者の意志」と「従業員のオーナーシップ」はセットで生産性が高まる |
それでは具体的にどのような要素があれば、オーナーシップの強い組織風土づくりができるのだろうか?TERASSで大切にされる考え方から、3つの前提を伺った。
「できるできないというより、会社の取りたい戦略に基づいて、やるかやらないかをゼロベースで考えることが大切だと思います」と語る
「コスト意識は結構あります。このアウトプットを期待するのに、誰がどのくらい労力かかるのかとか、従業員自ら工数計算して、これってペイするのかなと考えています。その価値があるかどうかの議論もせずに、とりあえず気合いで深夜やっておきますみたいなことをしない。アウトプットドリブンであることが大事なんです。何時から何時までPCの電源をつけていたかなどは、仕事の成果をはかる上では本質的ではありません」
組織と個人の合理性を追求する同社では、仕事にかかる工数とその効果を各人が客観的な視点で考える。アウトプットドリブンであるという組織の前提が、個人の自律的な思考を促しオーナーシップを生み出している。
エンジニア・デザイナーは、入社時に好きな労働環境構築のために最大10万円分の購入費を支給されます。ユーザーが触れる私たちのアウトプットを最良のものにするために、労働環境にも妥協はしません。
従業員がオーナーシップをもって働く前提で設計されている同社では、最良のアウトプットのための環境を妥協せず整える。従業員が意志を持って働く環境を選ぶ。そのための組織の前提がある。
「世の中に新しい価値観、価値を生み出す仕事、何かを考えて工夫してアイディアを出して実現するっていう知的生産のプロセスは今後すごく大切になってきます。それをやるために最も大事な要素は、組織側が縛らないことだと思うんですよね」
TERASSでは仕事を任せるという発想はなく、個々が仕事をつくり、発信し、実現していくという組織の前提があるという。自由度を重視し、理由なく組織が制約を課すことはしない。理由なく組織が個人を制限することは、オーナーシップの欠如に繋がるのだ。
POINT ・ アウトプットドリブンである・ 環境整備に妥協しない ・ 組織が個人を縛らない |
2020.05.22
文・Focus On編集部
江口 亮介
株式会社TERASS 代表取締役CEO
東京都出身。慶応義塾大学経済学部卒業。2012年に株式会社リクルートに新卒入社(現リクルート住まいカンパニー)し、SUUMOの広告企画営業として、約100社以上の不動産ディベロッパーを担当。その後、売買領域のMP(Media producer)として、SUUMOの商品戦略策定・営業推進・新商品開発などに関わる。2017年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社し、戦略・マーケティングを中心とした経営コンサルティングを手がけた後、2019年4月に株式会社TERASSを創業。個人で3回の不動産購入、2回のフルリノベーション、2回の不動産売却を経験。
>>次回(2020年5月29日公開)
『中編 | Superb Teamが実践する組織内情報の扱い方TIPS3選』
効果的なリモート組織運営には「意志」が重要になる。次回は、組織内部の「情報/コミュニケーション」の観点からより実践的な仕組みやツールについて紹介していく。
連載一覧 前編 | ウルトラリモートワークに学ぶ ― リモートで生産的な組織にある2つの「意志」 01【経営者の意志】やるんだ 02【メンバーの意志】True Ownership 03【具体的に】オーナーシップが育まれる組織の条件 中編 | Superb Teamが実践する組織内情報の扱い方TIPS3選 後編 | マッキンゼーで学んだ「花火を上げる」称賛文化 リモート時代の「個の仕事力」― 個の時代の個人戦略 |
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